『いつかここにいた貴方のために/ずっとそこにいる貴方のために』を読む。ゼロ年代っぽい雰囲気、セカイ系好だった人に刺さる、ストレート球。
『いつかここにいた貴方のために/ずっとそこにいる貴方のために』を読了。
著者は西塔鼎さん。電撃文庫より刊行。
少年兵のレンカは、ある日、戦場で少女に出会う。
地獄の最前線、たった一人で敵軍を凍てつかせ壊滅せしめる『兵器』の彼女との交流の中、次第に惹かれていって――――――
戦場を舞台にした悲恋物で、王道をいくボーイミーツガール。こういうの好きな人には、ストレートに刺さると思った。
ゼロ年代、『非戦闘員の少年と戦闘員の少女の関係性が社会的な枠組みを超えて世界に影響を与える』っていう物語群が流行したけれど、そこを令和の時代に、ダイレクトに蘇らせてくるとは……と、唸りながら読んでいた(主人公であるレンカも、がっつり兵士ではあるんですが)。
戦闘機械だったヒロイン、四月(よづき)が、レンカたちとの交流を通じて、日常の温かさや恋する気持ちを知って行く、というくだりが、オーソドックスかつ穏やかな切なさも併せ持っているところが、良いですね。
細やかな要素とかも、良かったと思う。
レンカと四月は、お互いに名前をつけ合う。
レンカは、戦闘の為だけに生まれて来た少女に、四月という名前を与えた。
四月は、レンカを『レンレン』と呼んで、慕う。
苛烈な戦場の中、(もしかしたら主人公の名前とかけている?)廉価に扱われる戦う者達の命。
戦うためだけに生まれて来た特別な存在であれ、一介の少年兵であれ、一人一人の中には、まず護らなければいけない平等な生命の芽吹きがある。
そういう主張が、「お互いに名前を与えあう」=最少単位の存在意義を認めあう、っていうやりとりの中に込められている気がして、メタファー効いてるなぁ、と関心。
終わり方も、良かったと思う。
帯に書いてあることだから、言ってしまうけれど、まさしく「救えなかった話」。
主人公達は、戦場という舞台に翻弄され切って、自分たちでは自分達を包む世界を制御できずに、物語は収束していく。
その中で、最後に残る希望……というには余りに儚い、「指針」みたいな物だけが残されて、「まだ、あがく」って、頑張り続けて行く。
泥臭く、それでいて清廉。実に良いじゃありませんか。
戦場のシーンも、臨場感がある感じ。
重厚さのバランス、読みやすさ、そういう取捨選択って難しいと思うんだけど、容赦のない突撃作戦とかの描写も、この作品はしっかりしている。
イラストも、色遣いが凄い好み。
特に、口絵の二ページめに書かれている、登場キャラ全員集合の絵。
青みがかった色彩が美しい。
表紙のコントラストも綺麗で、やっぱりライトノベルの表紙は重要だなぁと思う。
後、著者の方が結構、面白い事やられてる人みたいですね。
自分でカウントダウンイラスト描いたり、自分の作品の架空のアニメEDを、ニコニコ動画とかにアップロードしてたりして。
精力的に色々やっている人は、読み手としても応援したくなるもんだ。
オススメ!
気になった人は、ぜひ読んでみて頂戴!!!!!