応援宣伝「君がいた美しい世界と、君のいない美しい世界のこと」(電撃文庫):忘却と追憶の波動の向こうに、君はいた。

令和の時代は、どんなラノベが生まれるのか。今から楽しみですね。
どうも、ラノビーバーです。

 

さて今回紹介させて頂く作品は、こちらになります。

 

「君がいた美しい世界と、君のいない美しい世界のこと」(電撃文庫

 

著者は、神田夏生先生であります。

 

黒髪と桃色の、春らしくも美しいコントラストに目を引かれ購入。
「感涙必至のラスト5ページ」「あなたもきっと彼女に恋をする―――」

結果、帯の売り文句に間違いなしの良作でしたね!

 

それでは、おすすめポイントを紹介させて頂きましょう!

 

①この物語は、いわゆる「病気モノ」に属する感動ストーリーである。しかし!

 

この作品は、ヒロインを病気で亡くす物語であり、より分かりやすい言い方をするなら、「泣ける」話になっています。
そういったジャンルの物語は、一年の間にも数多く出版される系統です。

 

しかし、しかしですよ!
この物語には、そういった作品群の中でも、大きな特徴があるんです。

というのも、普通「病気もの」のジャンルでは、ヒロインは物語の終盤に死亡するのが通例。

しかし当作では、そこをひっくり返し、ヒロインを既に病気で喪失した状態から始まるのです!
そして、何としてももう一度ヒロイン……三日月緋花里(みかづきひかり)に会いたい主人公……日野友斗が、運命をやり直せるという不思議な力「リセット」を探し始める、という出だしになっています。

 

映画化された「君の膵臓を食べたい」や「君は月夜に光り輝く」を好きだった人達には、特にオススメしたい出来栄えとなっている本作ですが、その上で、一風変わったスタイルの話を読んでみたい、というラノベファンの方に、特にお勧めですね!

 

②三日月緋花里の魅力。既に亡くなっているからこそ、彼女の魅力は、より強く……。

 

「ヒロインが冒頭で亡くなっているということは、ヒロインはあまり出てこないの?」
と、思われる方もいらっしゃる方もいるかもしれません。

 

そうではないんですよ。
否、むしろ逆と言っても良いでしょうね。

 

「リセット」へと至るための旅の中で、主人公は度々、彼女との思い出が呼び覚まされることになります。
その形式が取られているからこそ、既に喪失していることが分かっているからこそ、回想の中での彼女とのやりとりが、瑞々しい生に満ちている。

 

そもそも、このヒロインであるところの緋花里、ただものではないんですよ。

 

彼女は、自分が病気で死ぬ事が分かっても「あなたには私を忘れて幸せになってほしい」とか、「私より素敵な女の子と恋をして」なんてことは言わない。
どころか、はっきりと「あなたには私の後を追って欲しい」と迫る。

 

あと、扉絵にもなっている場面。
夕斗に告白された緋花里のシーン、そこが凄く良いんですよね。
緋花里は友斗に、二階の窓から「私のことどう思っているの?」と尋ねるんですけど、急に好きな女の子からこんな事言われたら、心臓高鳴るどころじゃ無いじゃないですか! 

しかも、それに対し「大好きだよ」と返された緋花里は、何と、嬉しさのあまり、二階から飛び降りるんですよ!!!!

 

己の感情や好奇心に正直な緋花里は、「次にどんな行動をとるのか」という期待を抱かせると言う意味では、かえってミステリアス。読者としては、興味を持たざるを得ないんです。
そう言ったシーンが、衝撃的、というだけでなく、何とも彼女なりの「実生活的な態度」の枠組の中で書かれている。

 

確かに、「あなたもきっと彼女に恋をする」の帯に偽り無し。
こんな女の子に熱中してみたい、という思いが掻き立てられる。

 

③彼女にもう一度会うための、「リセット」へ至る旅の中で。

 

この作品のヒロインは、冒頭ではもう、病死しています。
そういった構成をとることにより発生しているもう一つの効果。
それは、ヒロインの喪失に、本一冊全編のボリュームでもって向かい合っている、と言うことです。

 

通常の病気モノでは、ヒロインの喪失は、物語のラストシーン付近。
つまり本作では、本来ならラストに集中する部分の空気感が、冒頭からラストに向かって、ずっと漂っているのです。
その濃い時間の中。
愛する者に纏わる、忘却と追憶の波動に向き合っていく。

 

「愛する者は胸の内でずっと生き続ける」のか、あるいは、昔の歌にもある通り「人は悲しいくらい忘れていく生き物」なのか。
そのどちらも本当であり、しかし完全でないとするならば、真の答えとは何なのか。
そういったことについて、考えさせられる作品でしたね。

 

以上が、「君がいた美しい世界と、君のいない美しい世界のこと」の、オススメポイントになります。

 

感動と、愛しさに纏わる青春の気配、そう言ったところに魅力を感じるラノベファンの方々は、是非読んでみてくださいね!

ではでは!